「発足十周年」を迎えて

 

 十周年とはまことに感無量である。たった十年であるが、私にとっては一生分が煮詰まったような尊い十年である。

振り返れば、二十代、青年団活動の一端として妻鹿史編纂に携わり、当地の歴史・人物史にのめりこんだのがすべての始まりであった。当地出身という母里太兵衛に導かれるように黒田官兵衛に惚れ込んだ私は、定年を迎えると妻に三拝九拝、退職金を以って史料館『播州黒田武士の館』を自宅に開設した。
そして平成十六年(2004)八月、ツテを頼って作家の柳谷郁子さんを訪ね、官兵衛をNHKの大河ドラマに採り上げてもらえるよう作品の執筆をお願いした。歴史作家ではないからと、答えは保留になったが、その際、まずは顕彰会の立ち上げを勧められた私は、早速、同好の士、新福杉夫氏、山下博文氏、柚木恒光氏、山里孝治氏、川石雅也氏らと図り、翌々十八年三月、当時姫路獨協大学副学長であった中元孝迪氏に会長をお願いして、新福氏の命名による『播磨の黒田武士顕彰会』設立準備会を持ったのであった。その時の参会者十六人の内、すでに四人が亡くなられていると思うと感慨深いものがある。

折しも姫路市が恒例の「お城祭り」に新機軸を打ち出そうとしていた。そこで先ずは活動の皮切りとなったのが、準備会から数か月足らずの八月五日、第五十七回姫路お城祭りに勇躍参加した『黒田武士二十四騎、里帰りパレード』である。

北九州市八幡西区の春日宮(黒田神社)を中心に筑前黒崎宿場祭りと称して商店街を練り歩く黒田二十四騎の甲冑パレードが毎年行われていると、漫画家にして歴史研究家の本山一城先生に教えられ、何度か訪ねていた。官兵衛・長政を始め二十四騎は、それぞれ姫路・播磨ゆかりの武将たちである。新福副会長が姫路市観光交流推進室長(当時)の岡本陽一氏に「ぜひ姫路でも」と交渉し実現の運びとなった。

そしてその実現の当日『播磨の黒田武士顕彰会』を正式に発足することにし、事務局はセントラルサクセス(株)内にお願いすることにしたのである。

私は東京の黒田家へご挨拶に飛んだ。何と言っても顕彰会の中心を成すのは黒田家である。第十六代長高公に顕彰会設立のご報告と、お城祭りにご来姫いただくようお願いするためである。そこで長高公が乗馬をされていることを知り、パレードへの期待がますます膨らんだ。この間、神戸新聞は「夢は大河ドラマへ」の大見出しで顕彰会発足を報じている。

再び新福氏と改めて黒田家を訪問し、馬上の黒田官兵衛役をお願いした。なかなか返事は頂けず、福岡の藤香会の中島副会長、黒田奨学会の各務理事長に挨拶に行きなさいということで、七月初旬、私たちは福岡・大分へ走った。藤香会・奨学会の両会は共に公のパレード出演に難色を示され、中島副会長は寡黙であったが、各務理事長は「黒田家を何と心得ているのか」と辛辣であった。黒田二十四騎もほとんどが播磨出身、福岡からの里帰りパレードに黒田本家のご出演を姫路市民が如何に切望しているかを訴える私たち根負けされた各務理事長は、ついに「列車はグリーン車で」と了承されたのであった。福岡黒田五十二万石家臣筋の古武士のような、手ごわかったそのお二人も今は鬼籍の人となられている。

難問の一つ、三十着に及ぶ甲冑の用意も、黒崎商店街の会長のご厚意で貸与を受けることが出来た。

残る問題は軍資金の調達である。お城祭り奉賛会からの助成金は六十万円であった。馬や甲冑の借料、その他の経費を含めると、百万円ほど不足している。そこで大小の幟旗で協賛をお願いすることにし、その数百四十九本、感謝に堪えません。

お祭り当日の朝、私たち数人は姫路駅頭で長高公をお待ちした。本当に来ていただけるのか少々不安があった私は、ホームから降りて来られた公を拝見したとき、これでお城祭りパレードは必ず成功すると確信した。姫路市の歴史的な一瞬であったと思っている。

翌年は、パレードの先頭に『官兵衛を大河ドラマへ』の横断幕を掲げ、馬上に官兵衛の妻「光姫」、二代目会長・姫路独協大学学長の大塚健洋氏の長政も前年登場していた。

そしてなんと、早くも平成二十四年十月十日、NHK大河ドラマに『軍師官兵衛』決定との予告がもたらされたのであった。二十六年、『軍師官兵衛』が好評のうちに放映されたのは周知のとおりである。

パレードは平成二十六年まで九年間続いた。その間、毎年、長高公は馬上の人となられ、姫路市民に親しい方となられた。また大塚会長のもと、獨協大学の学生たちが毎年猛暑をものともせず甲冑姿で華々しくパレードの先頭を切ってくれたのは、何にもまして有難く嬉しいことであった。

黒田家ゆかりの地めぐり、ゆかりの地との交流、黒田サミット、黒田武士ゼミ、黒田長久公の鳥絵展、二十四騎甲冑展等、多くの行事や企画も間断なく、年一回の総会には講演会を開催した。柳谷郁子さんの青少年向けの絵本『官兵衛さんの大きな夢』(絵・本山一城)は市内の小中学校に配布され、広く市民が官兵衛を知るよすがとなった。

今年(平成二十八年)の総会では次の目標が採択されている。

官兵衛公銅像の建立、記念館建設、個人会員五百名の達成等である。

大河ドラマを得た今こそ、官兵衛の生き方、哲学を、広めたい。青少年が官兵衛の哲学を学び、誇りを持ち、健やかに成長し、私たちの故郷がいよいよ活力に満ちることを、心から願ってやまない。

顕彰会はいよいよこれからこそが本番です。歩みを止めません。

三代目会長の重責がどっしりと胸に堪えています。会員を始め、市民の皆様、播磨の皆様、全国の官兵衛ファンの皆様、顕彰会の新たな十年に更なるご支援ご協力をお願い申し上げます。

播磨の黒田武士顕彰会 会長 神澤輝和

(播磨の黒田武士顕彰会「創立十周年記念誌」より)